まず会議の型から — アジェンダテンプレートと運用設計
まだCRM・MAを導入しない方へ
最初にやるべきは「会議の型」を作ることです
ツールの前に、週次会議で数字を見る習慣をつけてください。
会議の型がないままツールを入れると、データは溜まるが誰も見ない状態になります。
あなたの状況
診断の結果、あなたの組織ではCRM(顧客情報を一元管理するツール)・MA(見込み客へのメール配信などを自動化するツール)の導入よりも先に、「会議で数字を見て意思決定する型」を作る段階にあります。
ツールを導入しても、会議で使われなければデータ入力の目的が現場に伝わりません。入力データがなくても、まず「会議の型」を作ることで、「なぜ入力が必要なのか」が自然と現場に浸透します。30分の週次パイプライン会議から始めてください。
なぜ今「会議の型」が最優先なのか
あなたの組織で最優先すべきは、ツール導入や機能比較ではなく、「毎週決まったアジェンダで数字を見て、アクションを決める習慣を作ること」です。
CRM・MAツールが形骸化する組織には共通のパターンがあります。ツールを導入し、現場に入力を求めるが、入力されたデータがどの会議でも使われない。すると「入力しても意味がない」と現場が判断し、入力率が下がり、データが信用できなくなり、ツールが放置される。この悪循環の根本原因は、データを見る「場」が設計されていないことです。
会議の型を先に作れば、「この数字を来週の会議で見る」というゴールが明確になり、入力する理由が現場に伝わります。
会議の型がないときに起きる4つの問題
これまでの運用改善支援の中で、会議の型がない組織に共通するトラブルです。
- マネージャーが「記憶と感覚」で案件の状況を把握し、週ごとに聞く内容が変わる
- 会議が「報告会」になり、「次に何をするか」が決まらないまま終わる
- CRM・SFA(営業活動の記録・管理を支援するツール)にデータは入っているが、会議ではExcelやホワイトボードで話している
- 案件ごとの責任者が曖昧で、停滞案件に誰も手をつけない
週次パイプライン会議:そのまま使えるテンプレート
パイプライン(営業案件の進捗を段階別に並べた一覧)会議は、30〜45分で「全体進捗→重要案件→次のアクション」を確認する場です。以下のアジェンダをそのまま使ってください。
週次パイプライン会議 アジェンダテンプレート(30〜45分)
■ パート1:全体進捗の確認(5分)
・今月の売上目標 vs 実績(達成率 %)
・現在のペースでの着地見込み
・先月比での変化ポイント
■ パート2:重要案件レビュー(20〜30分)
・今月受注予定の案件 → 進捗確認
・Aランク案件 → リスクの有無を確認
・停滞案件(2週間以上アクションなし)→ 対応策を決定
■ パート3:Next Actionの合意(5分)
・「誰が・いつまでに・何をするか」の3点セットを明確にする
・必要なリソース(上司同行、技術者同席など)の依頼
・次回会議までの宿題を確認
■ 会議ルール
・議事録は会議中にリアルタイムで記録
・決定事項は会議終了時に全員で復唱
・データ未入力の案件はその場で入力
記入例(従業員30名・BtoB企業の場合)
■ パート1:全体進捗(5分)
今月目標:3,000万円 / 実績:1,800万円(達成率 60%)
着地見込み:2,600万円(Aランク案件800万円を加算)
先月比:商談数は横ばい、受注単価が15%上昇
■ パート2:重要案件レビュー(25分)
【受注予定】株式会社ABC・500万円 → 来週契約書送付予定、法務確認中
【Aランク】株式会社DEF・300万円 → 決裁者面談済み、競合あり → 差別化資料を作成
【停滞】株式会社GHI・200万円 → 3週間連絡なし → 担当者が月曜に電話フォロー
■ パート3:Next Action(5分)
田中:ABC社へ契約書を水曜までに送付
鈴木:DEF社への差別化資料を金曜までに作成
佐藤:GHI社へ月曜午前中に電話、状況を火曜の朝までに共有
KPI(目標達成に向けた中間の数値指標)最小セット:最初に見るべき4つの数字
週次会議で見る数字は、最初は4つで十分です。指標が多すぎると会議が長引き、何に集中すべきかが曖昧になります。
KPI最小セット
1. リード数
定義:マーケティング活動から獲得した見込み客の数
見る頻度:週次
2. 商談数
定義:営業がアポイントを取り、具体的な提案を行った件数
見る頻度:週次
3. 有効商談数
定義:予算・時期・ニーズが合致し、受注の可能性がある案件数
見る頻度:週次
4. 受注数
定義:契約に至った案件数(最終ゴール)
見る頻度:月次(週次で途中経過を確認)
この4つが安定して計測できるようになったら、「受注率」「平均商談期間」などを追加してください。最初から増やすと、どの数字を見ればいいか分からなくなります。
見込ランクの判定基準:客観的に決める方法
見込ランク(A/B/C)を「営業の勘」で判定すると、人によって基準がバラつき、売上予測の精度が下がります。客観的なYes/No条件で判定してください。
以下は「Bランク(受注見込みあり)」の判定例です。
- 決裁者との面会が完了している
- 予算感の合意が取れている
- 導入時期が明確になっている
- 次回商談のアポイントが確定している
4項目すべてYesならBランク、1つでもNoならCランクに分類します。Aランクは「Bランクの条件に加えて、口頭で発注意思を確認済み」のように、さらに条件を追加してください。
※ この基準は自社の営業プロセスに合わせてカスタマイズしてください。重要なのは「全員が同じ基準で判定できること」です。
会議を「決定の場」にする3つのルール
「報告するだけの会議」は形骸化します。会議を「意思決定の場」にするために、以下の3つを守ってください。
- 「誰が・いつまでに・何をするか」を必ず決める:案件レビューのたびに、Next Actionを3点セットで合意してください。「検討します」で終わらせないことが重要です
- 決定事項は会議終了時に復唱する:会議の最後に「今日決まったこと」を全員で確認します。記憶に頼ると、翌週「そんな話だったか?」となります
- データ未入力の案件はその場で入力する:「後で入力します」ではなく、会議中にその場で入力する習慣をつけてください。会議が入力のトリガーになります
用語解説
- CRM(Customer Relationship Management)
- 顧客情報や営業履歴を一元管理するツール・考え方。「いつ、誰と、何を話したか」を組織で共有するために使います。
- MA(Marketing Automation)
- 見込み客へのメール配信やスコアリングなどを自動化するツール。営業に渡す前の「育成」段階を担います。
- SFA(Sales Force Automation)
- 営業活動の記録・管理を支援するツール。商談の進捗、訪問履歴、受注予測などを管理します。CRMの一部として提供されることが多いです。
- パイプライン
- 営業案件の進捗を段階(ステージ)別に並べた一覧。「今月いくら受注できそうか」を可視化するために使います。
- KPI(Key Performance Indicator)
- 目標達成に向けた中間の数値指標。「月間の商談数」「受注率」など、プロセスが順調かどうかを測る指標です。
- KGI(Key Goal Indicator)
- 最終的なビジネスゴール(売上、利益など)を表す指標。「年間売上10億円」のように設定します。
- SLA(Service Level Agreement)
- サービス品質に関する合意事項。営業とマーケの間では「マーケから渡された見込み客に、営業は何営業日以内にフォローするか」のような取り決めに使います。
- 見込ランク(A/B/C)
- 案件の受注確度を分類する基準。主観ではなく、客観的な条件(決裁者面談済み、予算合意済みなど)で判定します。
- リード
- マーケティング活動で獲得した見込み客のこと。問い合わせ、資料ダウンロード、セミナー参加などで情報を取得した人を指します。
よくある失敗と対策
会議で見る指標が多すぎて、何に集中すべきか分からない
最初は「商談数」と「受注数」の2つだけから始めてください。安定してから1つずつ追加する方が、会議の質は上がります。
データが入力されていないので会議ができない
会議中に「その場で入力する」を基本にしてください。入力が先ではなく、会議が先です。会議で「この案件のステージは?」と聞くことが、入力のトリガーになります。
会議で報告はするが、決定事項がない
案件レビューのたびに「誰が・いつまでに・何をするか」を必ず決めてください。決定事項なしで次の案件に移ることを禁止するルールを作ると効果的です。
次にやること(7日 / 30日)
- 上記アジェンダテンプレートを自社用にカスタマイズする
- 営業メンバーに「来週からこの型で会議をする」と宣言する
- KPI最小セット(4つ)の定義を明文化する
- 最初の週次パイプライン会議を実施する
- 会議時間が適切か(30分で足りるか、長すぎないか)を振り返る
- 見込ランク(A/B/C)の判定基準を客観的な条件で定義する
- パイプラインを一覧できる簡易ダッシュボード(Excelでも可)を整備する
- マーケと営業の間のSLA(フォロー期限などの合意事項)導入を検討する
