まず営業プロセス定義から — 設計手順とテンプレート

DIAGNOSIS SALES PROCESS DEFINITION

DIAGNOSIS RESULT
ツール導入前の準備

まだCRM・MAを導入しない方へ
最初にやるべきは「営業プロセスの定義」です

ツールの前に、営業の流れを「言葉」にしてください。
定義がないまま導入すると、入力が増えるだけで成果は見えません。

あなたの状況

診断の結果、あなたの組織ではCRM(顧客情報を一元管理するツール)・MA(見込み客へのメール配信などを自動化するツール)の導入よりも先に、「営業プロセスの言語化と標準化」を行う段階にあります。
営業プロセスとは、見込み客との初回接触から受注・失注に至るまでの一連の流れのことです。この流れが言葉で定義されていない状態でツールを導入すると、「担当者ごとにステージの解釈が違う」「正確な売上見込みが立てられない」という問題が起きます。まずは1時間で営業プロセスを7段階に定義することから始めてください。

01

なぜ今「営業プロセス定義」が最優先なのか

あなたの組織で最優先すべきは、ツール導入や機能比較ではなく、「営業の流れを全員が同じ言葉で共有できる状態にすること」です。

これまでの運用改善支援の中で、CRM導入が失敗する最大の原因は「機能不足」ではなく「定義不足」でした。営業プロセスが言語化されていないと、ツールの入力項目を決められず、データが溜まっても分析に使えません。

SFA(Sales Force Automation:営業活動の記録・管理を支援するツール)やCRMは、あくまで「定義されたプロセス」をデジタルで動かすための道具です。プロセスの定義が先、ツール選定は後です。

02

定義がないときに現場で起きる5つの問題

営業プロセスが明文化されていない組織で共通して起きるトラブルです。

  • 担当者ごとに「提案済み」「検討中」などの進捗定義が異なり、パイプライン(営業案件の進捗を段階別に並べた一覧)の数字が信用できない
  • 失注理由が「その他」に集約され、なぜ負けたのかが分からない
  • 売上見込みの精度が低く、月末まで着地が見えない
  • 入力項目が多すぎて、現場が入力をやめてしまう
  • 長期間動きのない案件が放置され、パイプラインが膨れたまま

03

営業プロセス定義シート:そのまま使えるテンプレート

営業プロセスを7段階のステージで定義します。各ステージに「完了条件」を設けることで、主観的な判断を排除し、誰が見ても同じ基準で案件を分類できるようにします。

営業プロセス定義シート テンプレート

■ ステージ定義(7段階)
ステージ1:初回接触
完了条件:
ステージ2:ヒアリング完了
完了条件:
ステージ3:提案済み
完了条件:
ステージ4:検討中
完了条件:
ステージ5:内諾
完了条件:
ステージ6:契約完了
完了条件:
ステージ7:失注
完了条件:

■ 必須入力項目(最小セット)
1. 顧客名/案件名:
2. 現在のステージ:
3. 次アクション:
4. 期限:
5. 金額(概算):

■ 失注理由の分類
・価格(予算合わず)
・時期(検討延期・凍結)
・競合(他社選定)
・要件不一致
・決裁不可
・連絡不通

■ ステージ変更ルール
誰が判断するか:
どの会議で確認するか:
例外処理のルール:

記入例(従業員30名・BtoB企業の場合)

■ ステージ定義
 ステージ1:初回接触 → 完了条件:アポイント取得済み、担当者名が判明
 ステージ2:ヒアリング完了 → 完了条件:BANT(Budget=予算、Authority=決裁者、Need=課題、Timeline=時期の4項目)情報を聴取済み
 ステージ3:提案済み → 完了条件:提案書または見積書を提出済み
 ステージ4:検討中 → 完了条件:決裁者との面談を完了
 ステージ5:内諾 → 完了条件:口頭で発注意思を確認済み
 ステージ6:契約完了 → 完了条件:契約書の締結完了
 ステージ7:失注 → 完了条件:不採用の連絡を受領、または60日間連絡不通

■ 必須入力項目
 1. 顧客名:株式会社ABC/Webサイトリニューアル案件
 2. 現在のステージ:ステージ3(提案済み)
 3. 次アクション:決裁者への説明会を設定
 4. 期限:2026年3月15日
 5. 金額:500万円

■ ステージ変更ルール
 判断者:各案件担当者が変更、営業マネージャーが週次会議で確認
 確認会議:毎週月曜の営業定例(30分)
 例外処理:60日間ステージ変動なしの案件は「失注」または「ペンディング」に移動

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ステージ定義の原則:主観を排除し、事実で判定する

ステージの進捗判断で最も避けるべきは、「感触あり」「確度80%」のような主観的な表現です。

代わりに、客観的な完了条件(事実ベース)で判定してください。

  • 悪い例:「感触が良い」「確度80%」「そろそろ決まりそう」
  • 良い例:「見積書を提出済み」「決裁者との面談を完了」「発注の意思を口頭で確認済み」

事実ベースの定義にすることで、担当者が変わっても同じ基準で案件を分類でき、パイプラインの精度が上がります。

※ 「ステージを進める=何かの行動が完了した」という設計にしてください。進捗は行動の結果であり、感覚ではありません。

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失注理由の設計:「その他」をなくす分類法

失注理由は、次の改善アクションにつなげるためのデータです。「その他」が多い状態では、なぜ受注できなかったのかを分析できません。

失注理由を設計するポイントは3つです。

  1. 選択肢は6つ以内に絞る:価格・時期・競合・要件不一致・決裁不可・連絡不通。この6つでほぼカバーできます
  2. 「失注」と「ペンディング」を区別する:「時期延期」は失注ではなくペンディング(保留)として管理し、再アプローチのタイミングを設定します
  3. 「その他」を選んだら補足必須にする:どうしても分類できない場合のみ「その他」を許可し、自由記述を必須にします

失注理由のデータは、マーケティング施策の改善や商品開発へのフィードバックに活用できます。入力の手間に見合う「学び」が残る粒度を意識してください。

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入力項目は最小限にする:5項目で始める

「データを活用したい」という気持ちが強いほど、入力項目が増えがちです。しかし、入力率が下がれば、どれだけ項目を用意してもデータは使えません。

入力率100%を維持できる項目数で始めてください。最初は5項目で十分です。

  • 必須5項目:顧客名/案件名、現在のステージ、次アクション、期限、金額(概算)
  • 追加はデータが溜まってから:3ヶ月運用して入力率が安定したら、1項目ずつ追加を検討する
  • 入力を促す仕組み:週次会議でパイプラインを画面に映し、「この案件のステージは?」と確認することで、会議が入力のトリガーになります

※ 項目が多いと入力率が下がり、データが信用できなくなります。少ない項目で全員が入力する状態の方が、分析の精度は高くなります。

用語解説

CRM(Customer Relationship Management)
顧客情報や営業履歴を一元管理するツール・考え方。「いつ、誰と、何を話したか」を組織で共有するために使います。
SFA(Sales Force Automation)
営業活動の記録・管理を支援するツール。商談の進捗、訪問履歴、受注予測などを管理します。CRMの一部として提供されることが多いです。
MA(Marketing Automation)
見込み客へのメール配信やスコアリングなどを自動化するツール。営業に渡す前の「育成」段階を担います。
パイプライン
営業案件の進捗を段階(ステージ)別に並べた一覧。「今月いくら受注できそうか」を可視化するために使います。
BANT
Budget(予算)、Authority(決裁者)、Need(課題・ニーズ)、Timeline(導入時期)の4項目。ヒアリングで確認すべき情報の基本フレームワークです。
案件(Opportunity)
売上が発生する可能性がある商談単位。1社に対して複数の案件が存在する場合もあります。
失注理由(Lost Reason)
受注に至らなかった理由の分類。マーケティング施策の改善や商品開発へのフィードバックに使います。
ペンディング
検討が延期・一時停止された状態。失注とは異なり、再アプローチの可能性がある案件に使います。

よくある失敗と対策

ステージを細かく作りすぎる(10段階以上)

ステージは最大7〜8個に限定してください。細かすぎると担当者が迷い、「とりあえず前のまま」にされます。判断に迷うステージは統合してください。

定義を作っただけで、会議で使わない

週次の営業会議でパイプラインを画面に映し、「この案件は今どのステージ?」と確認する習慣をつけてください。会議で使わない定義は3ヶ月で形骸化します。

例外ケースのルールが決まっていない

「60日間ステージ変動なしの案件をどうするか」「複数部署が関わる案件の入力担当は誰か」など、例外処理のルールを事前に決めておいてください。ルールがないと現場判断がバラつきます。

09

次にやること(7日 / 30日)

最初の7日間
  • 上記テンプレートを自社用にカスタマイズし、ステージ定義を確定する
  • 営業メンバーに「この定義で運用する」と宣言する
  • 次の営業会議で、実際の案件をこのステージに当てはめてみる
30日以内
  • 例外処理のルール(長期滞留、複数部署案件など)を決める
  • パイプラインを一覧できるダッシュボード(Excelでも可)を用意する
  • 失注理由のデータを集め、傾向を1回分析してみる

これを書いた著者

小長谷直登のイメージ
株式会社ユニバーサルマーケティング代表取締役|ビジネスアナリスト
小長谷直登
1984年神奈川県足柄上郡生まれ。
広告・マーケ・インサイドセールス・営業・サポートを横断して、KPI定義・計測・運用ルール(MOps/RevOps)の整理と改善設計を支援しています。

WEBマーケティングとシステム開発で66社のビジネスを支援。SEOに強い会員サイトの構築を得意とし、新規会員獲得と既存顧客のLTV改善に寄与。

stripeを使った月額課金システムやキントーンやsalesforceとの連携。実績として動画配信サイト、ポイントシステム構築、フリマサイト、旅行予約サイト、オンラインサロン、モノのサブスクなど一般消費者向けのサービス設計とサイト設計を得意としています。
2025年7月 AIパスポート取得済

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