まずKPI定義から — 設計手順とテンプレート
まだCRM・MAを導入しない方へ
最初にやるべきは「KPIの定義」です
ツール選びの前に、何を測るかを決めましょう。
定義が曖昧なまま導入すると、改善も評価もできません。
あなたの状況
診断の結果、あなたの組織ではCRM・MAなどのツール導入よりも先に、「何を測って改善するか」を決める段階にあります。
KPI(目標に向けた中間の数値指標)が決まっていない状態でツールを入れると、入力だけ増えて成果が見えないまま形骸化するリスクがあります。まずは1時間で「KPI定義シート」を完成させることから始めてください。
なぜ今「KPI定義」が最優先なのか
あなたの組織で最優先すべきは、ツール導入や変更ではなく、「何を、どう測るか」を明確にすることです。
KPI(Key Performance Indicator:最終目標に向けたプロセスの達成度を測る中間指標)が曖昧な状態でツール選定を進めると、導入後に「何が改善したのか分からない」「入力が増えただけ」という事態になりがちです。
※ KPIとは:売上などの最終目標(KGI)を達成するために、途中のプロセスが順調かどうかを測る「中間の数値目標」のことです。例えば「月間の商談数」や「問い合わせからの返信率」などがKPIにあたります。
KPIが決まっていないときに起きる典型トラブル
これまでの運用改善支援の中で、KPIの定義が曖昧なまま進めた企業に共通するトラブルです。
- 部署ごとに追っている数字の定義が違い、会議で数字が合わない
- 「リード数」の意味が人によって異なり、報告のたびに確認作業が発生する
- ツールの入力項目が定まらず、現場の負荷だけが増える
- 改善策を打とうにも「どの数字を上げればいいか」の合意に時間がかかる
KPIが決まっていない5つのサイン
以下に心当たりがあれば、KPIの定義から着手することをお勧めします。
- 定例会議で「この数字、合ってる?」という確認が毎回ある
- 「リード」や「商談」の定義を聞かれたとき、即答できない
- データ集計のために毎回Excelを手作業で加工している
- 売上目標(KGI=最終ゴール)は決まっているが、そこに至る途中の指標は管理されていない
- KPIの達成・未達成の責任者が曖昧になっている
KPI定義シート:そのまま使えるテンプレート
KPIは項目名を決めるだけでは不十分です。「計算式」「データの取得元」「責任者」までセットで決める必要があります。以下をコピーして埋めてください。
KPI定義シート テンプレート
1) 最終目標(KGI):
2) KPI(3〜5個まで):
KPI名:
計算式(分子 ÷ 分母):
データ取得元(どの画面・どの表):
更新頻度(週次 / 月次):
責任者(誰が更新し、誰がレビューするか):
採用理由(なぜこのKPIか):
注意点(定義がズレやすいポイント):
3) 中間指標(改善のために追う先行指標):
4) 定義の変更ルール(いつ・誰が・どう変更するか):
記入例(従業員30名・BtoB企業の場合)
1) KGI:年間売上 3億円
2) KPI:
KPI名:月間の新規商談数
計算式:当月に「提案」ステージに進んだ案件数
データ取得元:SFAのパイプラインレポート
更新頻度:週次(毎週月曜AM更新)
責任者:営業マネージャーが更新、部長がレビュー
採用理由:受注の2ヶ月前に先行して動くため
注意点:「提案」の定義を「見積提出済み」に限定する
3) 中間指標:問い合わせ数 → 初回面談数 → 提案数
4) 変更ルール:四半期ごとに営業会議で見直し、部長承認で変更
決める順番:ゴール → 中間指標 → 先行指標
指標は必ずゴールから逆算して決めます。
- KGI(最終ゴール):例:年間売上10億円
- KPI(中間指標):KGIに直結するプロセス指標。例:月間受注数、商談数
- 先行指標:KPIを達成するために先に動く数字。例:問い合わせ数、MQL(マーケから営業に渡す見込み客)数
「先行指標」をモニタリングすることで、最終結果が出る前にプロセスの異常に気づき、早めに手を打てます。
定義がズレるポイントと固定の仕方
「受注率」ひとつとっても、定義は様々です。ここで認識がズレると、会議で議論が噛み合いません。
- 分母の定義:「全商談数」か、「ターゲット企業の商談だけ」か
- 分子の定義:「契約書の締結」か、「申込書の受領」か
- 範囲の定義:コスト計算(CPA=1件あたりの獲得費用/ CAC=顧客獲得コスト)を出す場合、広告費だけか、人件費やツール費用も含めるか
これらを文書に残し、関係者で合意してください。定義をドキュメント化することが、後々のトラブルを防ぎます。
「正解の数字」を1つに決める
会議で見る数字の正解(Single Source of Truth)を1つに定めます。同じ指標でも、ツールによって集計ロジックが異なり、数値がズレることがあります。
例えば以下のどれを「正」とするかを決めてください:
- 広告管理画面の数字
- MAツールのレポート画面
- SFA(営業活動管理ツール)/ CRMのダッシュボード
- 会計ソフトの実績値
「この会議ではCRMのダッシュボードの数値を正とする」のように決めてください。
KPIを「運用」にする:責任者と更新頻度
KPIを作っても、誰も見なければ意味がありません。「会議で使う」ことが定着の第一歩です。
- 誰が:数値の集計・入力に責任を持つか
- いつ:会議の何時間前までに更新するか
- 誰がレビューするか:どの会議でその数字を見て議論するか
用語解説
- KGI(Key Goal Indicator)
- 最終的なビジネスゴール(売上、利益など)。「年間売上10億円」のように設定します。
- KPI(Key Performance Indicator)
- ゴール達成への中間目標。「月間の商談数」「受注率」など、プロセスが順調かどうかを測る指標です。
- MQL(Marketing Qualified Lead)
- マーケティング活動で獲得した、一定の基準を満たす見込み客。例:資料をダウンロードした人、セミナーに参加した人。
- SQL(Sales Qualified Lead)
- 営業が「商談として追う価値がある」と判断した見込み客。MQLの中から、営業が電話やメールで確認し、見込みがあると判断した相手です。
- CPA(Cost Per Acquisition)
- 顧客やリードを1件獲得するためにかかった費用。例:広告費100万円で50件の問い合わせ → CPA = 2万円。
- CAC(Customer Acquisition Cost)
- 顧客獲得コスト。CPAと似ていますが、広告費だけでなく人件費やツール費を含めて計算するのが一般的です。
- ROI(Return On Investment)
- 投資対効果。かけた費用に対してどれだけ利益が出たか。何を「投資」「利益」に含めるかで数字が変わるため、計算範囲を先に合意する必要があります。
よくある失敗と対策
KPIが多すぎる(10個以上ある)
追うべき重要指標を3〜5個に絞ってください。残りは「参考指標」として、定例では見ません。
未達成のとき、誰がアクションを取るか決まっていない
KPIごとに「責任者」を明記してください。未達成時に原因分析と改善案を出す人が決まっていないと、数字を見るだけで終わります。
途中で計算式を変えたのに、過去データと比較している
計算式を変更する際は、変更日・変更内容・変更理由を履歴に残し、関係者に周知するルールを作ってください。
次にやること(7日 / 30日)
- 上記テンプレートでKPI定義シートを完成させる
- 定例会議でこのKPIを採用することを合意する
- 各KPIの集計責任者を指名する
- 主要KPIが見えるダッシュボード(簡易でOK)を固定する
- 定義変更が発生した場合のルールを決める
- 営業とマーケ間の用語の定義(MQL/SQLの条件)を合意する
