チーム開発を効率化するGitブランチ戦略|基本操作から3大フローまで完全解説

Gitのブランチを適切に運用できるようになると、開発フローが整い、複数人での作業もスムーズに進められます。しかし「ブランチを切る」とは具体的にどのような操作なのか、どんな準備や手順が必要なのかを理解していないと、思わぬトラブルに遭遇することもあります。

ここではブランチの基本から、作成手順、運用戦略、失敗例、実際の事例までを網羅的に解説します。

この記事のポイント

  • ブランチの概念とメリット、作成手順をやさしく解説
  • 運用戦略(Git Flow/GitHub Flow/Trunk-Based)の比較と選び方を提示
  • 実際の企業・団体による改善事例を紹介し、効果を数値で確認

1.ブランチとは何か?基本概念と目的

ブランチとは、コードの履歴を分岐させて独立した作業ラインを作る仕組みです。複数人で同じリポジトリに機能追加やバグ修正を行う際に、それぞれの作業内容を隔離しながら進められるため、main(旧master)ブランチの安定を保ちつつ開発できます。

ブランチを切るメリット

  • 安全に変更を試せる:本流に影響せずに新機能や修正を試行できます。
  • 複数人が同時に作業できる:各機能を別々のブランチで進めることで、作業の衝突を最小限に抑えます。
  • 履歴を分かりやすく保てる:機能や修正単位でブランチを管理すると、後から履歴を追いやすくなります。

main/masterとfeatureブランチの違い

main(master)は常にリリース可能な状態を保つ本流であり、featureブランチはその本流から分岐して特定の機能や課題に取り組むための枝です。作業が完了したらfeatureブランチをmainにマージし、不要になったら削除します。

2.ブランチ作成の準備:環境と前提条件

ブランチを切る前に、作業環境やリポジトリの状態を整えておきましょう。

Gitインストールとリポジトリの準備

まずはGitがインストールされているか確認し、対象リポジトリをローカルにクローンします。ターミナルで次のコマンドを実行してバージョンを確認できます。

git --version

次に、リモートリポジトリの設定を確認します。通常はoriginとして登録されています。

git remote -v

リモートとの同期と命名規則の決定

作業を始める前にmain(またはmaster)ブランチを最新の状態に更新し、命名規則を決めます。命名規則は15文字以内で機能が分かるようにし、例えばfeature/loginbugfix/paymentなどとします。

準備チェックリスト(診断ツール)

以下のチェックリストを使って準備状況を確認しましょう。診断UIは実装すると、質問に答えるだけで準備度合いが判定されます。

3.ブランチを切る手順:実践編

ブランチ作成からマージ、削除までの基本的な手順を順に紹介します。所要時間は概ね30分以内が目安です。

  1. 新しいブランチを作成する
    git checkout -b feature/○○ で本流から新しいブランチを切ります。git branch で現在のブランチ一覧を確認できます。
  2. 変更を行いコミットする
    ファイルを編集後、git add でステージングし、git commit -m "メッセージ" でコミットします。コミットは1つの目的に絞りましょう。
  3. リモートにプッシュする
    作業を共有する場合は git push origin feature/○○ でリモートに反映します。プルリクエストを作成する際はGitHub等のUIから行います。
  4. ブランチをマージする
    mainブランチに戻り (git checkout main)、git pull で最新化してから git merge feature/○○ を実行します。競合が起きた場合は手動で解決し、再度コミットします。
  5. ブランチを削除する
    マージ後不要になったブランチは git branch -d feature/○○ で削除します。リモートのブランチも git push origin --delete feature/○○ で削除しておきます。

4.ブランチ運用戦略と命名規則の比較

複数のブランチ戦略が存在し、チーム規模や開発スタイルによって選択すべき方法が異なります。

項目 Git Flow GitHub Flow Trunk‑Based
運用概要 developブランチとfeature/release/hotfixブランチを使い分ける複雑なフロー mainブランチと短命なfeatureブランチのみで構成されるシンプルなフロー main(trunk)に直接コミットし、機能フラグで切り替える
長所 大規模プロジェクトでの安定性と管理がしやすい 小規模チームや継続的デリバリーに適し、運用が容易 リードタイムが短く、大量のプルリクエストを高速で処理できる
短所 ブランチが増えて管理が複雑になりがち 複数環境や長期開発には不向き 機能フラグの管理コストが高く、運用に慣れが必要
適用シーン 大規模プロダクトや複数リリースラインを持つ環境 小規模チームやウェブサービスなど頻繁にデプロイする環境 大規模チームで高速に機能追加を行う企業(例:Microsoftなど)

Git Flowは安定性と秩序を重視する大規模プロジェクト向けであり、複数の長期ブランチを維持します。GitHub Flowはシンプルで、小規模チームが高速に開発・リリースする際に適しています。

Trunk‑Based開発は、多数の開発者が日々数百件のプルリクエストを処理するような大規模プロジェクトで採用されており、機能フラグによる管理が必須です。自分たちのプロジェクトの規模やリリース頻度に合わせて選択しましょう。

5.よくある失敗例とリカバリー方法

コンフリクトが発生した場合

ブランチをマージするとき、他のブランチと同じ箇所を変更していると競合が起こります。コンフリクトが発生した場合は以下の手順で対処します。

  1. 作業内容を一時退避する場合は git stash を使う。
  2. 最新のmainブランチを取り込み、git rebase main で履歴を書き換える。
  3. 競合箇所を手動で修正し、再度コミット。
  4. スタッシュしていた変更がある場合は git stash apply で戻す。

誤ったブランチにコミットした場合

別のブランチにコミットしてしまった場合は、git cherry-pick でコミットを移動するか、git reset で戻してから正しいブランチに反映させます。

命名や削除ミスによるトラブル

誤ったブランチ名を付けると混乱の原因になります。命名ルールを統一し、不要なブランチは早めに削除することで管理コストを減らします。

6.実例で学ぶブランチ戦略の改善効果

支払い.comブランチ戦略見直し事例(株式会社UPSIDER / FinTech)

2023‑12‑15公開。Git‑Flow運用の課題に対応するため、テスト環境を複数用意しスコープブランチを導入したところ、フロントエンド担当が2名→4名、バックエンド担当が3名→4名へ拡大しても開発効率を維持できました【参照日:2025‑09‑25】。

GitHub Copilot効果測定実証実験(プリンストン大学ほか / 学術機関)

2024‑09‑05公開。4,867名の開発者による大規模実証実験で、AI支援の導入によりタスク完了数が26.08%増、コミット数が13.55%増加しました【参照日:2025‑09‑25】。ブランチ戦略とは直接異なりますが、開発効率化の文脈で参考になります。

横浜銀行内製開発Git導入事例(株式会社横浜銀行 / 金融)

2025‑02‑01公開。銀行員エンジニア5名による内製開発体制を構築し、スマホアプリの月間アクティブユーザー率81%達成、収益効果10億円超を実現しました【参照日:2025‑09‑25】。安定したブランチ管理とCI/CD自動化が成功の鍵でした。

JP‑005 東京都COVID‑19対策サイトOSS開発(東京都 / 自治体)

2020‑03‑03公開。緊急対応としてわずか1週間でサイトを構築し、3週間で224名が改善に協力、全国54地域で活用されました【参照日:2025‑09‑25】。大規模なOSS開発におけるブランチ運用の好例です。

(補足:JP‑003 JCB事例、INT‑001 Microsoft Release Flow事例も参考として活用できます。)

7.まとめ

  • ブランチはコードの履歴を分岐させて安全に開発するための仕組みであり、目的やメリットを理解して運用することが大切
  • ブランチを切る前には環境準備と命名規則を確認し、作業はチェックリストで整える
  • 手順は「作成→コミット→プッシュ→マージ→削除」の流れで進め、所要時間は30分以内を目安にする
  • 運用戦略はGit Flow、GitHub Flow、Trunk‑Basedの中からチーム規模やリリース頻度に合わせて選び、表で比較して判断する
  • 実例から学べる改善効果を参考に、ブランチ戦略を最適化しよう

出典

  1. [UPSIDER Tech Blog(2023)](https://tech.up-sider.com/entry/2023/12/15/143123)(参照日:2025-09-25)
  2. [SSRN(2024)](https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=4945566)(参照日:2025-09-25)
  3. [JCB Tech Blog(2024)](https://tech.jcblab.jp/entry/2024/12/17/080000)(参照日:2025-09-25)
  4. [横浜銀行 Tech Blog(2025)](https://zenn.dev/boy_techblog)(参照日:2025-09-25)
  5. [東京都公式サイト(2020)](https://github.com/Tokyo-Metro-Gov/covid19)(参照日:2025-09-25)
  6. [Microsoft DevBlog(2017)](https://devblogs.microsoft.com/devops/release-flow-how-we-do-branching-on-the-vsts-team/)(参照日:2025-09-25)

小長谷直登のイメージ
株式会社ユニバーサルマーケティング代表取締役|ビジネスアナリスト
小長谷直登
1984年神奈川県足柄上郡生まれ。 WEBマーケティングとシステム開発で54社のビジネスを支援。 SEOに強い会員サイトの構築を得意とし、新規会員獲得と既存顧客のLTV改善に寄与。 stripeを使った月額課金システムやキントーンやsalesforceとの連携。 実績として動画配信サイト、ポイントシステム構築、フリマサイト、旅行予約サイト、オンラインサロン、モノのサブスクなど一般消費者向けのサービス設計とサイト設計を得意としています。 2025年7月 AIパスポート取得済

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