Scrum
読み: スクラム
ScrumとはAI開発の進め方
Scrumはアジャイル開発を実践するためのフレームワークである。2〜4週間のスプリントと呼ばれる固定期間で計画、開発、レビュー、振り返りを繰り返し、動くソフトウェアを継続的にリリースする。プロダクトオーナー、スクラムマスター、開発チームの三つの役割と、五つのイベントで構成される。
かんたんに言うと
ラグビーのスクラムが語源。チーム全員がひとかたまりになって、2週間ごとに「ここまで進んだ」と成果を見せ合いながら前に進む開発の進め方である。
プロダクトオーナースクラムマスター開発チームが噛み合う構造
Scrumにはプロダクトオーナー、スクラムマスター、開発チームという三つの役割がある。
プロダクトオーナーは「何を作るか」の優先順位を決める人物である。顧客の声と事業戦略を踏まえて、プロダクトバックログと呼ばれるタスク一覧を管理する。この役割に権限が集中するため、兼務や委員会制にすると意思決定が遅れてScrumが機能しなくなる。
スクラムマスターは「チームが円滑に回っているか」を見る人物である。マネージャーではない。障害を取り除くファシリテーターに近い。メンバーの進捗を管理したり、タスクを割り振ったりするのはスクラムマスターの仕事ではない。
開発チームは実際に手を動かすメンバーで、理想的には5〜9人とされる。自分たちでタスクの分担を決め、スプリント内で何をどこまでやるかをコミットする。
スプリントの中で起きること
スプリントは2〜4週間の固定期間である。多くのチームが2週間を採用している。
スプリントの冒頭で「スプリントプランニング」を行い、今回のスプリントで取り組むバックログ項目を選ぶ。全部はやれないので、チームの過去の実績を参考に「今回はここまで」と線を引く。
期間中は毎朝15分の「デイリースクラム」で進捗を共有する。報告会ではなく、困っていることを早期に検知するための場である。ここが形骸化すると、問題の発見が遅れてスプリントの後半で火を噴く。
スプリントの最終日には「スプリントレビュー」で成果物をステークホルダーに見せ、「スプリントレトロスペクティブ」でチームの働き方を振り返る。
プロダクトバックログの扱い方
プロダクトバックログはScrumの心臓部にあたる。ここにはユーザーストーリーという形式で「誰が、何を、なぜ必要としているか」が書かれている。
よくある失敗は、バックログが単なるタスクリストになっているケースである。「ログイン画面を作る」ではなく「新規顧客が初回利用時に3分以内にアカウントを作成できる」と書く。前者は作業の指示、後者は達成すべき成果である。
プロダクトオーナーはバックログの上位数項目を常に詳細化し、開発チームがすぐに着手できる状態に保つ。これをリファインメントと呼ぶ。リファインメントを怠ると、スプリントプランニングのたびに「この項目は何を意味しているのか」という議論に時間を取られる。
AI開発チームでの実践と工夫
機械学習プロジェクトでは、モデルの学習やデータ前処理に時間がかかるため、2週間で「動くもの」を見せるのが難しい場面がある。
この問題に対して、成果物の定義を柔軟にしているチームがうまくいっている。精度検証のレポート、データセットの品質分析、推論速度のベンチマーク結果もスプリントの成果物として認める。コードだけが成果ではない。
もうひとつの工夫は、データサイエンティストとソフトウェアエンジニアを同じチームに混ぜることである。モデルを作る人と本番環境に組み込む人が別チームにいると、引き渡しのたびに情報が欠落する。Scrumの「全員が同じスプリントゴールに向かう」原則がここで効いてくる。
導入前に確認しておくべきこと
Scrumを始める前に、組織がひとつだけ受け入れる必要がある覚悟がある。それは「完成していないものを見せる」ことへの抵抗を捨てることである。
日本の企業文化では、未完成品を上層部に見せることに心理的な抵抗が強い。しかしScrumでは2週間ごとに途中経過を見せ、方向修正を受けることが前提になっている。完成度80%で見せてフィードバックをもらい、残り20%の方向を正すほうが、完成度100%で見せて「全部やり直し」になるよりはるかにましである。
まずは小さなプロジェクトで3スプリントだけ試してほしい。6週間もあれば、自社に合うかどうかの判断材料は十分に揃う。
当社の見解
当社はツール選定において実用性を第一方針にしている。カタログスペックやベンチマークスコアではなく、実務で1週間使い倒して初めて判断する。フレームワークを増やすほど管理コストが増える経験もした。フックを増やしすぎてAIが情報過多でパニックになったこともある。足し算だけでなく、引き算の判断が選定の質を決める。検証せずに導入したツールは、ほぼ例外なく3か月以内に使わなくなった。
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